近年、地球規模で深刻化の一途を辿る温室効果ガスによる気候変動問題の解決に向けて、MLAを含むオーストラリアの赤身肉・畜産業界は複数の業界団体や政府機関なども巻き込んで、2030年までに温室効果ガス純排出量ゼロをめざす「CN30イニシアティブ」を立ち上げました。
ROADMAP
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2020
MLAが生産者向けに次世代の炭素勘定ツールをリリースし、カーボンニュートラルの拡張および採択パッケージを公表。
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2023
商業パートナーを通じて家畜補完が利用可能となり、生産性を高め、腸メタンを減少。肥育場や補完、農業全体の管理における炭素クレジットの生成のため、MLAは業界が利用できる少なくとも3つの新規または改訂された科学的手法に必要なR&Dを完了。
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2025
生産者が利用可能なサバンナ燃焼管理手法を最大4,000万haについて利用。年間1,000万以上の追加短足クレジットを生成。
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2030
生産者が2,500万haの新たなマメ科植物を導入。家畜の生産性を25~30%向上させ、排出量を10~20%削減。補完により生体重が最大10%増加。自然の家畜群の40%および肥育場の75%で用いられる腸メタンを最大90%減少。
植生管理手法を用いる生産者による木陰や防風林の利用可能な3億5500万haの牧草地の1000万haへの活用による農場における生産性の向上。
生産者の土壌炭素隔離手法により、牧草地の30%で土壌炭素が増加(年間50~100kgCO2‒e/ha)。生産者が家畜群の35%で活性化したフンコロガシを維持。
排出量削減の取り組み
生産性を向上させ、メタン排出量を抑制するための動物の遺伝的アプローチと飼育管理方法の研究や牧草地の低木やマメ科植物の植え付け、石化燃料の使用による二酸化炭素排出量削減のためのエネルギー効率化および再生技術の向上、牧草地の火入れによる亜酸化窒素やメタンの排出を抑制する管理方法の検討、放牧地の枯れ木による木質バイオマスへの炭素貯留を最適化する方法の検討などさまざまな取り組みを関係団体や政府と連携して推進しています。
排出量削減の取り組み成果
「CN30」へ向けた取り組みはすでに進展しており、オーストラリアの赤身肉・畜産業界は、2005年に1億3,070万トン温室効果ガス排出量を、2017年には5,570万トンにまで約57%も削減しました。さらに、2005年には国全体の21%を占めていたオーストラリア産の赤身肉産業から排出される温室効果ガス排出量割合は、2017年には半分以下の10%にまで低下しています。この削減は主に土地利用管理の変更、特に土地開拓の減少によるものです。
実現に向けた4つのアプローチ
本プロジェクトでは、他の研究機関や業界団体との連携など産業界全体に対する「業界リーダーシップ」、牧草の改善や飼育方法の見直し、エネルギーの効率利用などによる「温室効果ガス排出量削減」、樹木の牧草地における樹木や土壌中への「炭素貯蔵」、赤身肉のバリューチェーン全体の測定や調査、分析などを担う「統合マネジメントシステム」という4つのアプローチで、2030年までのカーボンニュートラル実現を目指しています。
今後の目標と効果
こうした取り組みを通じて、対2015年比で2022年に-20%、2025年には-50%の温室効果ガス排出量削減を目指しています。こうしたステップを経て、ある年度においてオーストラリアの赤身肉産業によって大気中に放出される温室効果ガスの量を、牧草地の土壌や植生に蓄積される追加炭素量と同等かそれ以下にするカーボンニュートラルを2030年までに達成する計画です。また、その達成は農場の生産性向上や牛・羊の生体重増加などをもたらし、オーストラリアの赤身肉産業のさらなる発展と競争力強化にも寄与します。