群馬県北軽井沢の山中、カラマツ林の奥に隠れ家のようなキャンプ場があります。美しい北軽井沢の景色に調和したログハウス調のコテージが目を引く一方で、自由にテントを張ることができるキャンプサイトは落ち葉や枝がきれいによけられています。
手付かずの自然のようでいて、隅々まで手入れが行き届いたキャンプ場「outside BASE」には、キャンプを楽しむ人たちがもっとも心地よい“キャンパーズ・ファースト”な環境が揃っています。それもそのはず、ここはアウトドアのプロで快適生活研究家としても活動する田中ケンさんがプロデュースしているキャンプ場だからです。
そしてこのoutside BASEでは、2006年のオープン当時から、キャンプの醍醐味であるバーベキューセットのメイン食材にオージー・ビーフを使い続けています。
オージー・ビーフは人を笑顔にする
20代は、雑誌モデルとして活躍した田中ケンさんは、20代後半から趣味のアウトドアを中心にしたライフスタイルをメディアに提案し続けています。さらに現在は、ここoutside BASEを運営するほか、栃木県の那須高原と高知県安田町のキャンプ場をプロデュースするなど、日本各地をフィールドに活躍するアウトドアのプロフェッショナルです。
とくに最近では、インターネット環境の整備やSNSの広がりをもとに「キャンプ飯」が注目を集めており、塊肉などを豪快に焼き上げる”映えるキャンプ料理”にニーズがあるといいます。
田中ケンさん(以降、田中) 「僕は、ここ15年くらいはずっとオージー・ビーフを使っているんですよ。outside BASEを始める頃に、キャンプやバーベキューなどでドーンと焼いて食べておいしい肉がないかと探していたときに出会ったんです。とくにずっとお気に入りなのは、キューブロール。日本でいうとリブロースですね。僕もそうなんですけど年齢を重ねてくると、脂っこいものが苦手になるんですよ(笑)。キューブロールの赤身の中に入っているいいサシの具合がたまんないですね」
2020年からの新型コロナウイルスでは、三密を回避できるレジャーとしてキャンプをはじめとするアウトドアに注目が集まりました。田中さんは、コロナ禍も含めて大きな社会不安が起きたときにアウトドアが注目されているように感じると言います。
田中 「自分の力で生きていくようなアウトドアの知識が活かせるからなのかと思っています。たとえば、2011年の東日本大震災のときに、僕は炊き出しの活動をさせてもらったんです。MLA(豪州食肉家畜生産者事業団)さんにも協力をしてもらって、寸胴鍋でオージー・ビーフのシチューを作ってきたんですよ。普通に炊き出しするとなると活動した後は、仙台あたりに戻って泊るほかない。だけど、僕たちは避難所の通路でいいからってテントを張ってとまれるんですよ。ひと晩中避難所にいるので、そこでいろんな話をすることができました。こんなことをいったら怒られちゃうんだけれど、貴重な経験をさせてもらったと思っています」
以来田中さんは、被災地になった福島県南相馬市の子どもたちをoutside BASEに招いたり、2016年の熊本地震のような震災が起きれば炊き出しに行ったりするなど、アウトドアを通じた社会活動にも積極的に取り組み始めました。さらに現在は子どもの貧困問題にも危機を感じており、貧困の子どもたち向けの炊き出しをしています。
田中 「おにぎりとか配るんですが、時々、オージー・ビーフのステーキをもっていくこともあるんですよ。肉ってやっぱり、特別なものなんですよね。みんなの心を和ませる。バーン!と大きな肉は、人をワクワクさせるんです。そういうなかでオージー・ビーフは、価格が和牛などに比べたらリーズナブル。なかなか和牛で塊肉をドーンと焼くというのを続けていくのは難しいですよ。オージー・ビーフだからできる。おいしさとともに、親しみやすさがあると思います」
キューブロールがおすすめ、厚さは3cmが一番おいしい
田中 「イベントとかでオージー・ビーフを食べてもらうと、『こんなにおいしいって知らなかった』ってみなさんいいますよ。やっぱり焼き方とか、ステーキに向いた部位の選び方がまだ知られていないんじゃないかと思います。ランプ肉(モモ肉の一部)をステーキで焼くとどうしても硬くなるので、そういうのはシチューにするとおいしいと思うんです」
outside BASEを運営する前は、軽井沢でバーベキュースタイルのレストランのオーナーをしていたこともあり、ある程度の料理の知識があったといいますが、それでもアウトドアでステーキを焼くようになってからは、飲食店や精肉店などのプロ向けのカッティングセミナーに参加しては、オージー・ビーフの部位ごとの特徴や塊肉で仕入れてからの下処理の方法などを学んだといいます。
さらにバーベキュー講座のようなイベントを年間10回は開催。その度に焼き方を披露しており、田中さん自身も「オージー・ビーフの焼き方はプロ並みの腕前だと思っている」といいます。
田中 「キャンプの焚き火で焼くなら、こんなスキレットがいいですね。火は、火柱が落ち着いて熾火(おきび)になってから始めます。熾火になってないと火が消えたりしてきちんと焼けないので。それと肉はあらかじめ常温に戻してから思ったよりも強めに塩を振っておきましょう」
スキレットを熾火の近くにおいてしっかり温めてから、肉の表面を焼いていきます。焼き目がキツネ色になるのと、焼き面ではない表面から汗のように水分が浮き出てきたのを見計らってひっくり返し、やや熾火から離して焼き上げたら、火から外してスキレットに蓋をして余熱で火を入れる。プロ顔負けの肉の焼き方です。
田中 「肉の厚さは3cmが一番おいしい。2cmだとちょっと物足りないんだよね。それと、最近好きなのは、焼き油を多めにして揚げ焼きみたいにする方法。ソースとかはなしで、塩、コショウだけでおいしいですよ」
取材時に田中さんが焼いたのは、オーストラリア産の葡萄牛。200日以上の穀物飼料で育てられたロンググレイン(長期穀物肥育)牛で、飼料になる穀物にワインを造るときに出るブドウの搾りかすを加えており、オーストラリア産牛肉らしい赤身主体ながら適度に脂のサシが入ったステーキに最適なオージー・ビーフといえます。
田中 「焼きあがったら芯の部分とかぶりの部分を分けて食べてもらうんですよ。そうすると同じキューブロールでも部分によって味がまったく違うことがわかるんです。そうやってイベントなどでおもしろおかしく話しながらやってます」
アウトドアは究極の遊びです
「アウトドア市場に関する調査を実施(2020年)」(矢野経済研究所)によると、2019年の市場規模は、5169億円といわれ年々成長を続けています。2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、やや縮小しましたが、それでも「ソロキャンプ」や「キャンプ系YouTuber」といったワードがメディアをにぎやかし、新しいキャンプ需要を掘り起こしたといえます。
田中 「今は、2000年代後半くらいから続く第二次アウトドアブームなんていわれていますよね。第一次は、1980年代でキャンプ人口は1000万人だったそうです。今のキャンプ人口は900万人弱といわれていますが、両方を経験した僕の肌感覚では、当時と今はほとんど変わらない盛り上がりじゃないかなと思っています」
田中さんのアウトドアライフの出会いは子どもの頃。家族旅行でコテージに泊ってバーベキューを楽しんだり、山遊びを父から教えてもらったりしていたといいます。
しかし小学校3年生からサッカーに出会い、高校3年生のときには、東京代表として全国大会に出場するほど熱中し、高校卒業後は雑誌『ポパイ』『メンズクラブ』などの男性ファッション雑誌を中心にモデルとして活躍していると、アウトドアから離れてしまう時期もありました。
しかし、モデル活動をしていた時期に先輩からキャンプに誘われたのがきっかけで、アウトドアに“再会”することになりました。寝袋だけ買って参加したキャンプでは、誘ってくれたモデルの先輩が、焚き火を使ってメキシコ料理のコース料理を作ってくれたといいます。
田中 「キャンプ料理なんてって思っていたので、びっくりしたんですよ。それに業界の人が集まっていますから、お酒はワインやシャンパンを持ち込んで、火を囲んで夜を過ごす。これは究極の遊びだと思いましたね。それからキャンプを始めて、トレイルレースに参加したり、山登りをしたり、カヌーをしたりといういろんなアクティビティにも挑戦するようになったんです」
それからしだいに、ファッション雑誌ではなくアウトドア雑誌から取材を受けるようになります。しかし、残念なことに第一次アウトドアブームが終息、一気にアウトドア人口が減少。大好きなアウトドアが衰退していくのを黙ってみていられなかった田中さんは、「メディアに取り上げてもらえるように、何かしかけなきゃいけない」と奮闘しはじめます。
その一つとして取り組んだのが「犬と一緒にキャンプをしよう」というテーマです。今でこそレストランやカフェでも、愛犬を連れて利用できるようになりましたが、田中さんが始めた20年前は、ペット同伴のホテルやペンションはほとんどない時代だったといいます。
定期的にイベントを続けていくと、最終的には何百人と集まるイベントに成長。その時にふるまうバーベキューで来場者に楽しんでもらいたいと、分厚い肉を探していたときにオージー・ビーフに出会います。
大きな夢を豪快に語っていきたい
田中 「北軽井沢のoutside BASEのほか、プロデュースしているキャンプ場が今は2カ所。将来的には、全国10カ所に同じようなベースをもつことが夢なんです。それだけあったら、たとえば今の時期は、紅葉がきれいなあそこの山に登りたいとか、夏なら涼しい渓谷に行こうとか、季節や気候に合わせて移動しながら暮らせますよね。旅よりも、ベースがあるほうが疲れないですしね」
outside BASEを始めて1年目でテレビ番組に取材されときに「キャンプ場を3カ所もちたい」と、田中さんは夢を言葉にしていたといいます。それから15年経って、その夢をみごとに叶えることができました。「夢はいわなきゃダメだ」と思ったと同時に、「目標はすごくでっかくもつ」ということも実感したそうです。
田中 「小さい目標しかなければ、小さい目標で満足してしまう。その倍の目標をもってれば、小さい目標は、通過点になるんですよ」
さらに夢が大きければたいていのことは苦にならないといいます。キャンプサイトの枝拾いやゴミ拾い、施設の清掃などの地味な仕事も、スタッフと一緒にいまだに田中さんはやっている。新しい施設の立ち上げがあれば、もちろん付きっきりになってオープンさせる。それは、今がゴールではないと思うからだといいます。
田中 「じつは、今新たに4カ所のキャンプ場のプロデュースを進めています。でもそれも通過点でしかないから、大変だとはまったく思ってないですね。それをやりながら、ここはこういう風に工夫したほうがいいんだろうなとか、次を考えながらやっています。それに現場のことを忘れっちゃったらだめだとも思うんです。それに最初にoutside BASEを始めた頃は、僕とスタッフ2人くらいでやってたんですよ。今は『TEAM outside』という仲間でできるっていうのがすごく楽しいんです」
「一生遊んでいたい」という田中さんの話を聞いていると、こちら側まで勇気と元気をもらえるような気がします。それほどエネルギッシュで情熱的でありながら、少年のような無邪気さが魅力になって、周囲の人の心を掴むのでしょう。
田中 「僕は、できるだけ豪快な人生を生きたいなと思ってるんです。そういう意味では、オージー・ビーフの豪快さは、僕の生き方そのものだなと思っています。豪快に遊ぶし、豪快に食べるし、豪快に夢を追いかけていきたいですね」